露頭の観察

平成18年活動の記録

平成18年体験活動
「僕らは地層の探検隊!―松島の成り立ちをさぐる―」

平成18年度子どもゆめ基金助成活動「松島の成り立ちを探る」(独立行政法人国立青少年教育振興機構より助成)の開催を後援しました(2006年8月1日~2日)。

この活動では、風光明媚な景勝地「松島」をテーマに、普段なにげなく眺めている景色の背景にある、その成り立ち・歴史に焦点をあて、なぜそこでそのような景色を見ることができるのかについて自然科学的見地から検討してみることにチャレンジしました。

“マイ粒度表”を作製し松島の地層を観察

仙台市内を中心とする小~中学生、高校生33名の参加者は、夏休み期間の2日間、梅雨明けの太陽の下でフィールドワークと室内実習を楽しみました。

活動第1日目は、室内で「松島」周辺に分布する新第三紀の地層群についての講義をうけ、これらの地層の特徴や地層が形成される過程を学びました。
その後、地層を野外で観察するにあたっての基礎的な観察方法と、地層の特徴を記録するための地層区分の基準についての解説をうけました。これらを理解した上で、実際の地層についてその構成堆積物の特徴を記録するための粒度区分を野外で簡便に見積もるための方法として、粒度表の作製に取りくみました。
砂や礫の粒子をふるいを用いてふるい分け、粒度ごとに穴をあけたプラスチック板に埋め込んで固定し、ふたを取り付けると、自作の粒度表の完成です。ふたの表面に各自のデザインをほどこして、“マイ粒度表”に仕上げました。カラフルなもの、みんなが驚くほど素敵なスケッチが描かれた力作など、立派な作品となりました。

お昼休みをはさんで午後には、地層の立体的イメージを実感するために、地層の模型作りにも挑戦しました。カラー粘土をこね、これらを何層かかさねて、地層が海底に堆積し、累重する過程を復元し、化石に見立てた貝殻片や星の砂なども敷きこんで、地層模型を作りあげました。
はじめのうちは要領をえなかった参加者も、しだいにコツを理解し、独自の堆積史と累重モデルの完成です。最後には、出来上がった地層模型の累積過程をそれぞれ発表してもらいました。
これらの室内実習を明日のフィールドワークの事前準備として、いよいよ「松島」周辺に分布する実際の地層の観察に挑戦です。

第2日目は、野外実習にはほど良いうす日の射す天候で、松島へ出かけての地層観察を体験しました。松島湾を一望できる林道沿いに露出する、新第三系網尻層と松島層を観察しました。網尻層は砂岩、礫岩、凝灰岩の互層からなる地層で、これを厚い火砕流堆積物の松島層がおおっているのがよく観察できました。
午前中は、4班に分かれて地層観察の基本である柱状図作製に挑みました。各班ごとに指導者の先生方に教わりながら、一枚一枚の単層の重なりをていねいにスケッチして特徴を観察しながら、柱状図に仕上げていきました。
はじめのうちは慣れない作業に戸惑いながらも、しだいに効率よく記録が取れるようになり、それぞれの班ごとの立派な柱状図が出来上がっていきました。
午後に入って、地層中から植物化石なども発見でき、疲れも忘れて一時の宝探しにも熱中できました。

最後に、各班ごとの成果として、それぞれの観察事項と出来上がった柱状図を発表してもらい、第1日日の室内での解説事項との関連付けもして、松島周辺の地層の堆積過程についての考察ができました。

2日間という短い時間での体験ではありますが、身近な地域に分布する地層の観察を通じて、自然の営みとその結果としての地層の成り立ちを実感し、風景の中から捉えることのできる自然の摂理と自然からのメッセージを体験してもらえたようです。
今後は、何気なく目にしていた風景でさえ、一過性のものではなく、それらからのメッセージを受け止め、これまでとは異なる風景として参加者の中にとどまることが楽しみです。