東北大学総合学術博物館

THE TOHOKU UNIVERSITY MUSEUM

音響測深の開発と海底地形図の作成

現代でも実施されている、音響測深装置とよばれる音波を使用した測深法の初めの記録は、1826年にスイスのコラドンとストラムによる湖中での音速測定です。当時、摂氏8度の水中で音の速度は秒速1,435mであったことを報告しています。

それから音を利用した水深測定の試みが始まりますが、実際に広く使用され始めるのは20世紀に入ってからです。1912年に起こったタイタニック号沈没や1914年から1919年まで起こった第一次世界大戦をきっかけにし、音響探査技術はさらに発展していきました。

一方で、この時期にはモホロビチッチによる地球内部の不連続面(モホロビチッチ不連続面)の発見(1909年)やウェゲナーによる大陸移動説の提唱(1915年)など、科学的にも新たな理論の提唱がありました。

世界の海底地形の全体像について、本格的な調査が始まったのは第二次世界大戦後のことです。東西の冷戦を背景に、アメリカとソ連(現ロシア)は宇宙と深海に到達するための科学技術開発に力を入れます。具体的には、月への一番乗りとマントルへの一番乗りを競い合いました。

このようなアメリカの方向性の中で、アメリカ人であるヒーゼンとサーブによる世界の海底地形図作成が始まりました。彼らは、仮説の提唱と実際の測量による実証を繰り返し、1957年には大西洋に延々と連なる深海の山脈である大西洋中央海嶺の存在を示した海底地形図を提唱します。しかし、当時は実証が追いつかず、彼らの仮説は広くは受け入れられてはいませんでした。それから彼らの地道な調査は続き、20年後の1977年、現代とほぼ同じ形状の海底地形図の発表に至りました。

ヒーセンとサーブが発表した海底地形図
World Ocean Floor Panorama by Heezen & Tharp (1977)

日本でも1960年以降、海洋研究の基盤が整備され、国内の研究機関が強化されていきます。その中で、海洋調査船や探査機の運用が開始され、より詳細な海底地形図の作成へと着手していきました。日本周辺の海底地形図は、プレートテクトニクスの確立とともに、地震発生帯研究や海底火山をはじめとする自然現象の解明に大きく役立っています。

次のページでは、地図のデジタル化についても振り返ります。

参考文献:
Mervine, E., 2010, A Famous Ocean Floor Map, AGU Blogs.