東北大学総合学術博物館 ミニ標本案内 vol.1 ストロマトライト

地球に酸素をもたらした生き物の記録 ――― 「ストロマトライト」 (Stromatolite)

先カンブリア時代(原生代初期、約20億年前)
中国、天津市 二十里台付近産

地球の酸素のタネ?
それは、20億年以上も前という途方もない大昔の海中で始まりました。初めて、光合成により酸素を作り出すシアノバクテリアが出現したのです。ストロマトライトは、そのシアノバクテリアの活動によって造られた層状の堆積構造です。地球上の酸素は、はるか20億年以上も前に、海の中から誕生したんですね。私たちは、そんな大昔のシアノバクテリアがつくりはじめた「酸素のタネ」のおかげで、この地球に生まれ出ることができたのです。
20億年以上も前の酸素はもう残っていないのでしょうか?
それでは、もしかして、私たちが吸っている酸素の中に、大昔に最初につくられた酸素が混じっている?そんなことはないでしょうか。
ところが、可能性は薄いようです。そのほとんどは、海中の鉄イオンと反応して酸化鉄となり,海底に沈殿して縞状鉄鉱層をつくったと考えられています。現在使われている鉄資源のほとんどは、この縞状鉄鉱層から掘り出されたものです。シアノバクテリアが作り出した酸素は、身近な鉄製品を通して現在の私たちとつながっているのです。
8億5千万年前は、1年が435日だった?
ストロマトライトをつくるシアノバクテリアは、1日に1枚のストロマトライトの層をつくり、太陽の南中高度の季節変化に伴って、1年で1周期のカーブを描きます。そして、8億5千万年前のストロマトライトについて、一周期の層数を数えたところ、その当時は1年が435日であったことが分かりました(Awramik and Vanyo, 1986)。
他にも、古生代のサンゴの成長輪の周期性から、約4億年前のデボン紀には1年が400日程度であったとする論文もあります(Wells, 1963など)。生物たちは、大昔は地球の自転が今よりも速く、それが次第に減衰していることを、きちんと記録していたのです。
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実は今もつくられています
なんと現在もストロマトライトはつくられているのです。西オーストラリアのシャーク湾には、直径50~60cmの巨大なまこのような黒い岩体のストロマトライトの群生があり、20億年以上も前から変わらず、海の中でポコポコと酸素を産出しています。シャーク湾のストロマトライトの年間成長率は0.4mm程度だとする研究例もありますので、高さ40cmの群体はおよそ1000歳(!)ということになります(McNamara, 1993)。今、私たちが吸っている酸素は、そんな気が遠くなるような長い年月をかけて生き物が作り出したものなのです。
※先カンブリア時代は、約46億年前に地球が誕生してから、カンブリア紀が始まるまでの約40億年間のことをいいます。地球の歴史の大部分は「先カンブリア時代」なのです!

展示室内の標本の位置

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