東北地方から発見された古人骨

ー 縄文から現代まで ー


 明治期以降、近代科学が発達する中で、日本人の起源に関する研究は、一つの大きなテ−マとして取り上げられ、人類学・考古学の研究領域からいくつかの考え方が提出されてきた。それらを整理してみると、縄文時代人が現代日本人の祖先集団に置き換わったとする「人種交代説」、縄文時代人が近隣の集団と混血して現代日本人を形成したとする「混血説」、縄文時代人が小進化して現代日本人に至ったとする「移行説」などの学説にまとめることができよう。近年に至っては、形質人類学、考古学、民族学、言語学等に加え、さらに遺伝学のレベルなどの広範囲にわたる学問領域から様々なアプロ−チが試みられており、日本人の起源に関する見解が百家争鳴の感を受ける。
 本総合学術博物館の運営委員でもある東北大学医学部 百々幸雄教授は、形質人類学の分野から、数千個体の古人骨の相違を時期ごとに調べ、その形態変異を見つけることによって現代人のル−ツに迫ろうとする研究をすすめている。今回の展示では、古人骨の「形態小変異」の研究をおこなっている百々教授が分析した骨格標本の一部を各時代ごとに並べ、時間の流れの中で古人骨の形態にどのような変化が見られるのか、御覧になっていただきたいと考えます。また、これらの人骨は発掘調査によって考古学上の時期が確認され、その所属時期が明らかにされたものです。今回の展示から縄文時代人の細かな変化、縄文時代人と古墳・奈良・平安・江戸の各時代人の頭骨の相違を御理解していただきたい。