東北大学総合学術博物館のすべて Ⅷ 「中国・朝鮮国境の大活火山 白頭山の謎」

日中朝韓での国際的な観測の必要性と
東北アジア研究センターのなすべきこと

白近年、白頭山では地震や地殻変動が活発化し、近い将来における噴火の可能性を完全に否定することはできません。仮に噴火が天池のなかで起きるとすると、小規模であっても津波が発生し、長白瀑布を経て二道白河沿いに水が流れ下り、大規模な土石流になることが予想されます。この川沿いには多くの街が点在しています。例えば、二道白河鎮には数万人が生活し、ここが土石流に襲われた場合、大きな被害が出ることは明らかです。また、朝鮮側の白頭山山麓にある三池淵郡は、朝鮮が観光地化を目指しており、飛行場、住宅や観光施設があり、噴火によっては火山灰や軽石に厚く覆われる危険性があります。さらに噴火の規模が大きくなると、10世紀噴火噴出物の分布図に示されるとおり、火砕流や土石流などで中国・朝鮮両国が直接的に重大な被害にあうばかりでなく、降下火山噴出物によってロシアや日本まで広く被災する可能性があります。

このようなことから、例え小規模な噴火であっても可能性がある以上、火山噴火についての研究が活発で噴火災害対策に実績がある日本が中心となって、白頭山を地勢的に取り囲む東北アジアの国々が互いに協力し対応してゆくことが大切だと考えます。このような対応をとるには、学術分野として理系文系両方の知識と経験が必要ですし、国レベルだけでなく、民間レベルでの協力関係の構築も重要です。現在の東北アジアには、日本朝鮮間ばかりでなく、それぞれの国々の間にも数多くの難問が存在しています。しかし、可能なところから協力しあい、地道に信頼関係を構築することによって、他の多くの難問に対しても初めて解決の糸口がみえてくるのではないでしょうか。

日中朝の研究者の記念写真

中国吉林大学の金教授(左)
朝鮮科学院地理研究所の林教授(中央)
東北アジア研究センター谷口教授(右)

平壌から2日間かけて車を乗り継いで来て、白頭山で私たちを2日間待ち、白頭山の話をしにきた朝鮮科学院の林教授との記念写真です。

やがて、日中朝韓4ヶ国による共同研究が自由にできる良い時期が来るのを期待しています。