自然のちから+人間のちから「窒素の調節」●企画展「土のけしき・土のふしぎ」 東北大学総合学術博物館のすべてⅨ

窒素の調節

おいしい米を作るために

イネは日本や東南アジア諸国の主要作物です。人の力で育てることが容易で、水田で栽培すれば長期間連作できます。ほとんどの必須微量元素はかんがい水から得ることができます。 ところが、自然のままではよい米はとれません。人間のちからとして、必要な養分を肥料として与える(施肥)ことが重要です。稲の生育に最も大きく影響するのは窒素です。窒素が少なくなると、光合成ができなくなるのです。しかし、窒素の施肥量は多すぎても少なすぎてもよくありません。窒素を与えすぎたイネは葉の緑色が濃く、一見良さそうに見えますが、病気がつきやすく、穂の出る時期が遅れ、実りが不十分になります。窒素を与えない方がよい時期もあります。穂が出揃ってから窒素を与えると、味の良い米を生産できないのです。

肥料による稲の生育の違い

変化する窒素の作用

適切な窒素施肥は作物の生育に重要なことの一つですが、高濃度のアンモニアガスが発生して、その部分の根の生育を妨げてしまうことがあります。

尿素はよく使われる窒素肥料の一つです。尿素が土の微生物により分解されアンモニウムイオンになるときはアルカリ性になる傾向ですが、少量であれば土の中で中和されます。しかし、その量が多くなるとアルカリ性になってアンモニウムイオンはアンモニアガスになります。植物の根にとってアンモニウムイオンは養分ですが、アンモニアガスは毒です。下左の写真では、尿素を与えた部分にアンモニアガスが発生し、根の生育が妨げられているのがわかります。ところが、6週間後にはアンモニアガスは出おわり、残ったアンモニウムイオンの肥料効果が出て、尿素を与えた部分に逆に根が密集しています。

植物の生育に多量に必要な窒素ですが、条件によってその効果は激しく変化します。このような変化を知りつつ窒素を使えば、よい効果が得られます。

変化する窒素(尿素)の作用