宇宙から土を調べる●企画展「土のけしき・土のふしぎ」 東北大学総合学術博物館のすべてⅨ

宇宙から土を調べる

土とその上に生育している植物とはお互いに影響しあっています。たとえば、栄養が豊富な沖積土壌は植物がよく育ちますが、養分が少ない火山放出物未熟土壌は植物の生育がよくありません。また、生育している植物によって土が変化して、同じ火山灰からできた土でも、針葉樹が生えていると腐植が多くなったり、広葉 樹だと少なくなったりします。このように、地上の植物を見ることは土をしらべる重要な手がかりになります。しかし、広い範囲の植物を調べて歩くのは大変です。このため、飛 行機や人工衛星を使って、空や宇宙から地上の様子を調べる技術(リモートセンシング)ができました。

地球観測衛星と気象観測衛星

リモートセンシングは、光を使って、直接手に触れることなく、対象物を調べる技術です。皆さんもごぞんじの気象衛星「ひまわり」もリモートセンシングの例です。右図は、気象観測衛星と地球観測衛星との2つのリモートセンシング衛星を示しています。 気象衛星「ひまわり」は、赤道上空35,786kmの円軌道で1日1回転することで、同じ地点の日本を観測し続けることができます。気象観測衛星は地上からいつも同じ所にあるように見えるので、静止衛星とよばれています。 地球観測衛星は、上空300~1,500kmの円軌道ほぼ北極点と南極点の上を通る極軌道で1日10~20回転します。北極と南極の上空を通る同じ軌道を回り続けますが、地球が自転することで、世界中を観測することができます。

地球観測衛星は太陽光の反射を利用する

多くの地球観測衛星は、左図のように太陽光の反射を利用します。可視光(人間の目で見える光)と、可視光より長い波長の赤外線(人間の目では見ることができない)も観測し、土、植物、都市の様子を調べます。「モノリスで土を見る」でご紹介した東北地方全体の画像は地球観測衛星「だいち」にのったAVINR2計測器、モノリス採取地点の鳥瞰図(上空から見た図)は地球観測衛星「テラ」のASTER計測器で観測したものです。

地球観測衛星「テラ」で計測した画像

右の図は下北半島恐山周辺の画像と、その画像を土地被覆物で分 類した結果です。「モノリスで土を見る」で展示している下北半島のモノリス採取箇所を表示しました。小目名沢は広葉樹林、八滝沢 は針葉樹林であることがわかります。原画像では針葉樹の緑が広葉樹より濃いことがわかります。このような色の差により、それぞれの土地被覆物に分けることができます。

日本は島国で、四方を海で囲まれ雨にめぐまれており、植物で土がおおわれるため、リモートセンシングで土そのものを把握することは難しいです。しかし、宇宙から植物や地形を調べることにより、土の分布状態やその性質を推定するのに役立ちます。