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図版 3

Glycymeris gorokuensis Nomura, 1938

ゴウロクタマキガイ

 



竜の口層の固有種のひとつ。
   
分類
  軟体動物門 二枚貝綱 翼形亜綱 フネガイ目 タマキガイ科
  Phylum Mollusca, Class Bivalvia, Subclass Pterimorphia, Order Arcoida, Family Glycymerididae
   
時代
  新生代新第三紀鮮新世前期(約500万年前)
分布
  宮城県,完全な成体は、郷六以外の産地では産出していない,仙台周辺以外の他地域からの産出報告はない(化石産出)
生息深度と底質
  潮間帯下から水深30mくらい,細砂底,内生(推定)
   

同定のポイント

Glycymeris 属

殻が、丸くて、ほぼ対称な外形をしている。殻の表面は、なめらかであるが、よく見ると、殻頂から放射方向に、たくさんのごく細い溝が刻まれているのが分かる。内側は、殻頂の下に三角形の靱帯面があり、山形の模様(靱帯溝)がついている。靱帯面の左右(正式には「前後」)の下に、ひげのような恰好で、小さくて強い歯が並ぶ。

近縁の化石種との違いを識別するのは、なかなか難しい。数多くの標本を検討して、形のバリエーションを把握し、近縁の種との違いや類似点を明白にする必要がある。

 


原記載
Nomura, 1938 :
 
Molluscan Fossils from the Tatunokuti Shell Bed Exposed at Goroku Cliff in the Western Border of Sendai
[ Science Reports of the Tohoku Imperial University, 2nd Series (Geology), Vol. 19, No. 2, p. 235-275 ]
 

野村七平 1938年:

 
仙台西縁部の郷六の崖に露出する竜の口貝殻層より産出した軟体動物化石
[東北帝国大学理科報告 二類(地質学)]
 
Glycymeris gorokuensis n. sp.
 
Holotype 東北大学地質学古生物学教室 IGPS Reg. No. 16142 ,産地:郷六
Paratype 斎藤報恩会自然史博物館 Reg. No. 2200 ,産地:郷六
 

 
(和訳)殻は厚く、大きな方である。長さは70mmに達する。等殻で、ほぼ左右対称形。輪郭は円に近く、いくぶん横長。中位程度に膨らむ。殻頂はほぼ中心に位置し、小さくて、あまり尖っていない。二つの殻頂の間には狭い空間があって隔てられている。殻頂は、傾いているか、ないしは、あきらかに内側に巻いている。背縁は短かめで、ほぼ直線状であり、殻頂において130°の角度を成しつつ、前後にほぼ等辺状。前端部および後端部は丸いが、後端部は時として、丸いというよりむしろ、截形(せつけい)[頭を切られた形]に近い。底辺は、均整のとれた半円形の曲線を成している。殻の表面は、放射状の溝と同心状の皺(しわ)によって模様がつけられている。放射溝は、細く、非常に多数であり、ほぼ均等で、溝と溝の間の平らな部分よりも幅が狭い。また、表面の風化した部分では、もっとくっきりとした大きな溝が、小さいやつの5つないし8つおきに見られる。くっきりした溝は、貝が生きている時の、色のついた放射状のラインの存在を表している。同心線は、きわめて細く、多数であり、よりはっきりと目立つ周期的な線と交互する感じである。靱帯面は三角形で、横方向に延びていて、大きさは中庸で、放射状の溝および、溝の2倍の幅のうねを、5つか6つ伴う。主歯板は、頑丈であるが、あまり広くはなくて、両サイドに15個くらいのやや小振りな歯を伴っている。殻頂の下にはつるんとしたところがあり、そこで歯は不連続となっている。内縁は、粗い鋸歯状を呈する。後部の筋痕は円形で、前部の筋痕よりも少し小さい。殻高は64mm、殻長は67mm、両殻合わせた時の殻幅は40mm(模式標本において)。準模式標本のひとつでは、殻の厚みは約5mmである。

 日本からは、化石も現生も含めて、20種かそこらの Glycymeris 属の種が記録されている。これらは、以下のようなタイプにグループ分けされる。

 1)G. yessoensis Sowerby タイプ:殻は大柄で、表面は滑らかか、ないしは、放射溝が見られる。靱帯面は広く、たくさんの深い放射状の溝を伴う。

 2)G. albolineata Lischke タイプ:殻は非常に大きく、表面は滑らかか、ないしは、放射溝が見られる。靱帯面は狭く、痕跡的な放射状の溝を少し伴うが、溝は見られないこともある。このタイプは、Glycymeris 属の典型的なものであるようだ。

 3)G. pilsbryi Yokoyama タイプ:殻は小さく、三角形で、放射溝が見られたり見られなかったりする。

 4)G. auriflua Reeve タイプ:殻はやや大きく、表面は強い放射肋で特徴付けられる。靱帯面は狭く、目立った放射溝はない。このタイプは、Pectunculus Lamarck のことである。

 5)G. dautzenbergeri Prashad タイプ:殻は中庸の大きさで、表面は放射状の弱い肋が見られる。靱帯面は狭く、放射溝はない。このタイプは、Melaxinaea Iredale のことである。

 本種は、特徴的な靱帯溝を持つ点で、明らかに、最初のタイプ(G. yessoensis Sowerby タイプ)に属する。本種は、仙台北方の七北田村松森の中新統より産する G. matumoriensis Nomura and Hatai*(1) と、円形の輪郭を持つ点で結び付けられるが、G. matumoriensis に比べて、殻の膨らみが大きくなく、靱帯面が狭く、靱帯溝の数が少なく、溝が深い点で異なっている。本種はまた、明らかに歯の数が多い。

 G. gorokuensis n. sp. は、信濃の鮮新統から産する G. crassa Kuroda*(2) とも似ていて、最初私は、本種を Kuroda の種として同定した。しかし、郷六産の標本は、殻の膨らみが少し弱く、靱帯面の背が低い。Kuroda は、彼の種を G. albolineata (Lischke) や G. nakamurai Makiyama と比較したが、彼の種は、幅広い靱帯溝を持つことで、その2種から容易に区別される。Kuroda の種は、上記の分類に従い、まちがいなく G. yessoensis Sowerby タイプに属する。

 G. yessoensis のずんぐりした形態のものが、本種と似てくることは、ここで指摘しておくべきである。

 材料:郷六で、まれ。2標本,斎藤報恩会博物館コレクション登録番号2200。8標本,東北帝国大学地質学古生物学教室コレクション登録番号16142。

*(1) Nomura and Hatai, Saito Ho-on Kai Mus., Res. Bull., No.13, p.123, pl.17, figs.1-6, 1937.

*(2) Kuroda in Homma, Geology of Central Sinano, Molluscan Part, p.29, figs.90,91, 1931 (in Japanese).

end