日本文化財科学会第34回大会にて

弘前大学と東北大学総合学術博物館との共同研究が日本文化財科学会で論文賞を受賞

弘前大学と東北大学総合学術博物館との共同研究が日本文化財科学会で論文賞を受賞

弘前大学人文社会科学部北日本考古学研究センターの片岡太郎講師・上条信彦准教授と東北大学総合学術博物館の鹿納晴尚技術支援員・佐々木理准教授による研究論文「X線CT観察による北東北の縄文時代晩期の漆櫛の製作技術」が、2017年6月に日本文化財科学会にて論文賞を受賞しました。

この研究論文は、X線CT(X-ray Computed Tomography)を用いて縄文時代晩期の漆櫛の内部構造を調査し、その製作過程を解明することを試みるものです。

これまで漆櫛の製作技術の研究では、外観形式の検討や塗料の分析などが行われ、ある程度の時期的・地域的特徴、また彩色材料等が明らかにされてきました。しかし、例えば櫛歯の固定のような具体的な技法については、資料の劣化によって情報が失われていることから検討が難しいと考えられていました。

片岡講師らの共同研究チームは、東北大学総合学術博物館にあるX線CTを用いて縄文時代晩期の漆櫛のCT像や内部構造の3次元モデルを作成し、「結歯式」と呼ばれる漆櫛のかたちがどのように設計されていたのか、櫛歯はどのように削りだされ、どのように結束されていたのか、といった詳細な技法の解明に成功しました。またこの研究は、劣化の進んだ漆櫛を非破壊・非接触で分析する手法を確立したという点で、文化財保護の観点からも重要な成果となりました。

論文:片岡太郎・上条信彦・鹿納晴尚・佐々木理(2017)「X線CT観察による北東北の縄文時代晩期の漆櫛の製作技術」考古学と自然科学 第72号 pp.29-44

日本文化財科学会第34回大会にて
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